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ジャケット・パンツの街着と比べて考えてみる
以前、友人から
「着物は合理的ではないのに、なぜ今着るのか」
と聞かれたことがあります。
確かに現代では、ジーンズにスニーカーの方が動きやすいのは事実です。しかしこの比較は少し不公平かもしれません。
着物はもともと作業服ではなく、町人や武士が日常的に着ていた服です。
現代で言えば、
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襟付きシャツ
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ジャケット
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パンツ
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革靴
といった街着やオフィスワーカーの服に近い存在だったと考えられます。
そこで今回は、ジーンズではなくジャケットとパンツのスタイルと比較しながら、着物の合理性について考えてみたいと思います。
着物とジャケットスタイルの運動性
まず、動きやすさについてです。
一般には「着物は動きにくい」と思われていますが、実際には動きが制限される場所が異なるだけです。
上半身の動き
ジャケットは肩に芯地が入っているため、腕を大きく上げる動作はあまり得意ではありません。
一方で着物は、肩の構造が非常に単純で、袖口も広く取られています。そのため腕の動き自体は比較的自由です。
上半身の可動域だけを見ると、着物は意外と動きやすい服だと言えます。
下半身の動き
着物で制限されるのは主にこの二つです。
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裾による歩幅の制限
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帯による腰回りの固定
確かに大股で歩くことや走ることには向いていません。
しかしジャケットと革靴のスタイルも、そもそもスポーツのための服ではありません。街を歩く、座る、人と会うといった用途であれば、着物は特別に不自由な服というわけでもありません。
実は床の生活には着物の方が自然
着物の合理性を考えるとき、もう一つ重要な前提があります。それは生活様式です。
日本では今でも、和室のある住宅は多く存在します。床に座る生活が残っている家庭も少なくありません。
このような生活では、実は着物の方が自然に感じられることがあります。
パンツスタイルで正座をすると、膝や股の部分が突っ張ります。ジャケットも背中にシワが寄ります。
しかし着物は
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正座
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あぐら
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床に座る生活
を前提に作られています。体を筒状に包む構造なので、座ったときに布が自然に動き、動作を妨げにくいのです。
つまり
椅子中心の生活には洋服が合理的で、床中心の生活には着物が合理的
という面があります。
町人と武士の普段着としての着物
着物は、もともと日本人の多くが日常的に着ていた服でした。
江戸時代で言えば、
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町人
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武士
の服が着物です。
現代で言えば、オフィスワーカーや街の人たちの服に近い存在です。
一方で、肉体労働をする人たちは少し違う服装をしていました。
例えば
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股引
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腹掛
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半纏
などです。
股引をそのまま出した姿で働く人も多く、これは現代で言えば作業着のようなものです。
つまり当時も
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普段の服
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作業の服
は分かれていました。
着物は作業服ではなく、日常生活の服だったわけです。
着物は「別の生活環境」に合わせた服
着物が非合理に見える理由は、おそらく生活環境の違いにあります。
現代の洋服は
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椅子
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車
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電車
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速い移動
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洗濯機中心の生活
といった都市生活に合わせて発達してきました。
一方で着物は
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畳
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床に座る生活
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家庭での仕立て
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布を長く使う文化
といった社会の中で生まれた服です。
そのため、現代の基準だけで見ると非合理に見える部分があるのは確かです。
しかし見方を変えると、着物は別の生活環境にきちんと適応した服だったとも言えます。